14.ひきょうしよう

 

「………うー…。」

めーちゃんは机に突っ伏して唸っている。

別に、お酒を飲んでそうなったわけじゃない。

今ここには、僕とめーちゃんしかいない、

控え室のようなところ。

さっきまではミクがいたんだけど…。

 

「…ふぅ…。」

「あっ、カイト兄さん!やっと、戻ってきたっ!」

「え、なに、ミク、どうしたの?」

「えっとね、メイコ姉さん、歌を歌う時に失敗しちゃったんだって…。
 
 大したことじゃないと思うんだけど、メイコ姉さんは気にしてて。
 
 傍にいてあげてほしいの。傷つけたりしないように。」

「うん、わかったよ。」

「……わわ、もうこんな時間っ!じゃ、カイト兄さん。わたし行くねっ!」

 

ミクは用事があったのか、急いで出て行っちゃったんだ。

だから、今はめーちゃんとふたりきり。

「…あー…うぅ……。」

「ほら、めーちゃん。元気出して。」

そう元気づけようと声をかける。

「…元気、なんて…。」

「いつものめーちゃんらしくないよ?」

「いつもの、わたし…。」

めーちゃんは黙りこんだかと思ったら、急に起き上がって。

「そうよね。いつものわたし、は…。仕事のことで悩んで…る…なんて…。」

気持ちを切り替えようとしたみたいだったけど、上手く切り替わらなかったようで。

顔をあげてはいるものの、うつむいている。

「…めーちゃん。」

語りかけるように。

「めーちゃんは、かっこいいよ。」

「…え?…なに言ってんの、ふざけてんじゃ、ないわよ…っ!」

いつもほどの元気はなかったけど、めーちゃんはいつものように返してくれた。

「僕、めーちゃんの傍にいると、元気がもらえるような気がするんだ。」

「…な、何よ。どうしたのよ急に。」

めーちゃんがまっすぐ僕のほうを見てる。

「だから…。」

そこで一呼吸置いて。

「僕、ずっとめーちゃんの傍に居てもいいかな?」

「…勝手にすれば、いいんじゃないの?」

めーちゃんはいつもの調子で、言った。

「カイトは面白いし…。…わたしも確かに、カイトの近くにいたら元気が出てくる…。
 
 うん、もう大丈夫。心配させて悪かったわね。」

笑う。

うん、いつものめーちゃんだ。

「よかった、めーちゃんが元気になって。」

僕も一緒に、笑う。


でもきっと、めーちゃんは気が付いてない。

…ちょっと、卑怯だったかな…?

 

ひきょうしよう

(ずっとめーちゃんの傍に居てもいいかな?)

 

あとがき

ひらがなを漢字に変換してもいいとのことだったのですが、

普通に『卑怯』にしてしまいました。

カイトは確信犯です。

めーちゃんは気が付いてません。

さりげないプロポーズ、のつもりです。

…どうも、わたしが書くとカイトがヘタレではなくなります。

ミクはきっと、空気を読みました。←


ごめんなさい、null様。

これは他の御方の作られたお題なので、

差し上げることはできないかと思います…。

でもこんなのでもよろしければ、お楽しみください。

…遅くなって、申し訳ありませんでした。

苦情は、null様のみ受け付けます。

キリリク、ありがとうございましたっ! 

 

スクロールでおまけです。


8/15 凍都

 

 

 

 

 

 

 

 


僕が、また控え室に戻った時にはもうめーちゃんは戻ってきていて。

「…めーちゃん、先に帰っててもよかったのに…。」

返事は返ってこない。

めーちゃんは、またさっきのテーブルに突っ伏していたから。

安らかな寝息を立てて、眠っていた。

「もう…。」

その顔がとても幸せそうで、

僕はしばらくの間ずっと、めーちゃんのことを見つめていた。

「…あーあ。」

そのまま、床に座り込む。

僕が、

いつか歌った曲のヒーローならいいのに。

それなら、

僕は君にすべてを伝えられる。

今だって、躊躇しないで…。

めーちゃんを。


君を連れてどこまでも行ける。

それを出来ないのは、僕が弱いから…。

「…ほら、めーちゃん。起きて。帰るよ。」

君に触れることさえ出来ない僕は。

どれだけ弱いんだ。

もっと強くなりたい。

「ん…?…カイト。」

「帰ろう?…め…ぇちゃん。」

「…そうね。」

君を呼び捨てにする勇気も出ない。

 

帰り道。

「めーちゃん。僕、変わった方がいいのかな…?」

めーちゃんに聞いてみた。

めーちゃんはいきなりでとても驚いていたけど、

笑って言ってくれた。

「カイトは…そのままでいいわよ。」

だから思ったんだ。

僕はヒーローじゃない。

僕は僕なんだ、と。

「…そうだね、ありがとう、メイコ。」

「うん。…って、えっ?…ちょっと、呼び捨てにしてんじゃないわよ!」

「…え?…あっ!」


僕はカイトだから、メイコのことが好きになったんだ。



あとがき

…おまけの価値が。

最初は、『卑怯』で書こうと思ったんですが…。

どうもそこまでは書けず断念。

というか憧れちゃだめだカイト。

そして意味不明文。

…ごめんなさい。

では、おまけでした。

8/15 凍都

 

 

 

 

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