「………うー…。」
めーちゃんは机に突っ伏して唸っている。
別に、お酒を飲んでそうなったわけじゃない。
今ここには、僕とめーちゃんしかいない、
控え室のようなところ。
さっきまではミクがいたんだけど…。
「…ふぅ…。」
「あっ、カイト兄さん!やっと、戻ってきたっ!」
「え、なに、ミク、どうしたの?」
「えっとね、メイコ姉さん、歌を歌う時に失敗しちゃったんだって…。
大したことじゃないと思うんだけど、メイコ姉さんは気にしてて。
傍にいてあげてほしいの。傷つけたりしないように。」
「うん、わかったよ。」
「……わわ、もうこんな時間っ!じゃ、カイト兄さん。わたし行くねっ!」
ミクは用事があったのか、急いで出て行っちゃったんだ。
だから、今はめーちゃんとふたりきり。
「…あー…うぅ……。」
「ほら、めーちゃん。元気出して。」
そう元気づけようと声をかける。
「…元気、なんて…。」
「いつものめーちゃんらしくないよ?」
「いつもの、わたし…。」
めーちゃんは黙りこんだかと思ったら、急に起き上がって。
「そうよね。いつものわたし、は…。仕事のことで悩んで…る…なんて…。」
気持ちを切り替えようとしたみたいだったけど、上手く切り替わらなかったようで。
顔をあげてはいるものの、うつむいている。
「…めーちゃん。」
語りかけるように。
「めーちゃんは、かっこいいよ。」
「…え?…なに言ってんの、ふざけてんじゃ、ないわよ…っ!」
いつもほどの元気はなかったけど、めーちゃんはいつものように返してくれた。
「僕、めーちゃんの傍にいると、元気がもらえるような気がするんだ。」
「…な、何よ。どうしたのよ急に。」
めーちゃんがまっすぐ僕のほうを見てる。
「だから…。」
そこで一呼吸置いて。
「僕、ずっとめーちゃんの傍に居てもいいかな?」
「…勝手にすれば、いいんじゃないの?」
めーちゃんはいつもの調子で、言った。
「カイトは面白いし…。…わたしも確かに、カイトの近くにいたら元気が出てくる…。
うん、もう大丈夫。心配させて悪かったわね。」
笑う。
うん、いつものめーちゃんだ。
「よかった、めーちゃんが元気になって。」
僕も一緒に、笑う。
でもきっと、めーちゃんは気が付いてない。
…ちょっと、卑怯だったかな…?
ひきょうしよう
(ずっとめーちゃんの傍に居てもいいかな?)
あとがき
ひらがなを漢字に変換してもいいとのことだったのですが、
普通に『卑怯』にしてしまいました。
カイトは確信犯です。
めーちゃんは気が付いてません。
さりげないプロポーズ、のつもりです。
…どうも、わたしが書くとカイトがヘタレではなくなります。
ミクはきっと、空気を読みました。←
ごめんなさい、null様。
これは他の御方の作られたお題なので、
差し上げることはできないかと思います…。
でもこんなのでもよろしければ、お楽しみください。
…遅くなって、申し訳ありませんでした。
苦情は、null様のみ受け付けます。
キリリク、ありがとうございましたっ!
スクロールでおまけです。
8/15 凍都
僕が、また控え室に戻った時にはもうめーちゃんは戻ってきていて。
「…めーちゃん、先に帰っててもよかったのに…。」
返事は返ってこない。
めーちゃんは、またさっきのテーブルに突っ伏していたから。
安らかな寝息を立てて、眠っていた。
「もう…。」
その顔がとても幸せそうで、
僕はしばらくの間ずっと、めーちゃんのことを見つめていた。
「…あーあ。」
そのまま、床に座り込む。
僕が、
いつか歌った曲のヒーローならいいのに。
それなら、
僕は君にすべてを伝えられる。
今だって、躊躇しないで…。
めーちゃんを。
君を連れてどこまでも行ける。
それを出来ないのは、僕が弱いから…。
「…ほら、めーちゃん。起きて。帰るよ。」
君に触れることさえ出来ない僕は。
どれだけ弱いんだ。
もっと強くなりたい。
「ん…?…カイト。」
「帰ろう?…め…ぇちゃん。」
「…そうね。」
君を呼び捨てにする勇気も出ない。
帰り道。
「めーちゃん。僕、変わった方がいいのかな…?」
めーちゃんに聞いてみた。
めーちゃんはいきなりでとても驚いていたけど、
笑って言ってくれた。
「カイトは…そのままでいいわよ。」
だから思ったんだ。
僕はヒーローじゃない。
僕は僕なんだ、と。
「…そうだね、ありがとう、メイコ。」
「うん。…って、えっ?…ちょっと、呼び捨てにしてんじゃないわよ!」
「…え?…あっ!」
僕はカイトだから、メイコのことが好きになったんだ。
あとがき
…おまけの価値が。
最初は、『卑怯』で書こうと思ったんですが…。
どうもそこまでは書けず断念。
というか憧れちゃだめだカイト。
そして意味不明文。
…ごめんなさい。
では、おまけでした。
8/15 凍都